2021年5月、ディジュリドゥという中が空洞な丸太のような楽器に、樹脂粘土で蛇を作って巻き付けたものを制作しました。他の方にもぜひ作ってほしいので、私の作り方をご紹介します。試行錯誤しながら一度作っただけなので、これがベストな作り方なのかはわかりません。また、作者は造形について学んだり生業にしているわけでもなく、自己流で作成しています。悩んだり検証したりしていた制作の様子を知りたい方は、がっつり試行錯誤篇をご覧ください。完成品は製作依頼主のFacebookの記事 2021年5月12日17:37と2021年6月15日05:02でご覧ください。
量はディジュリドゥのサイズや蛇のデザインによるので記載していません。一部、私が作った場合の使用量を参考に記載しています。
まずは表面をきれいにします。この時、表面に傷や塗装の剥がれがないかチェックします。うまくデザインすれば、蛇で隠せます。
麻紐を巻き付けてマスキングテープで留めて、蛇の中心の位置決めます。スタンドに設定して演奏する場合は、接地面に蛇がないようにしたほうがいいでしょう。演奏時の吹き口の位置が決まっている場合は、左右の重さのバランスも考えると演奏しやすくなるでしょう。巻き付けたら、蛇の太さを決めて水性ダーマトグラフで下描きします。
(私はやらなかったのですが、ディジュリドゥの塗装を削って地を出したほうがよかったと思います。デザインによっては、ディジュリドゥの塗装ごと、蛇が剥がれる可能性があります。)粘土をディジュリドゥにくっ付ける時のとっかかりになるよう、蛇の本体部分に麻紐を接着します。かさ増しして粘土の量を減らし、乾燥しやすくする目的もあります。接着剤を付けて、麻紐を乗せて、マスキングテープで仮留めするという作業を延々と繰り返します。接着剤が乾いたら、マスキングテープを剥がします。
頭は軽量粘土で一回り小さいものを作成し、土台にします。ディジュリドゥの蛇の頭がくる位置に粘土を載せて成形します。粘土を盛り付けやすいよう、表面はデコボコにします。粘土が乾燥したら接着剤で貼り付けます。首の隙間は軽量粘土で埋めます。
作業環境作りもやっておきます。ディジュリドゥを作業台に寝かせるので、巻き付けた粘土が台に付かないよう、足になる台を作ります。段ボールを長方形に切って折って三角にし、ガムテープで留めます。ディジュリドゥが載る部分は少し窪ませて転がりにくくします。これを二つ作ります。ディジュリドゥスタンドや壁を使って立てた状態で作業してもいいかもしれませんが、粘土を押し付けるので台に寝かせたほうがいいと思います。
反射シートにカボションを乗せ、目玉の形がわかるようしるしを油性マーカーで描きます。カボションを外し、反射シートに瞳を描きます。カボションに透明な接着剤を塗って、反射シートに貼り付けます。瞳が目玉の中央にくるようにします。接着剤が乾いたら、はみ出た反射シートをハサミで切り落とします。2枚目の写真は、試作品の頭に目玉を付けてみたところです。
舌パーツは小さくて成形しにくいので、先に作って貼り付けます。ディジュリドゥの蛇の舌がくる位置に粘土を載せて成形します。蛇本体に根本が埋まる分、少し長めにします。粘土が乾いたら紙やすりをかけて整えて、接着剤でディジュリドゥに貼り付けます。(私はやらなかったのですが、塗装もやっておけばよかったです。)
一気に作業したほうがいいので、まとまった時間がある時にやるといいです。でもどうしても途中で中断する場合は、調理用ラップをあてて乾燥防止をすればいいです。しっぽから頭の方へ、蛇の首元のあたりまで粘土を少しづつ盛り付けて成形します。手のひらサイズの粘土を手に取って練り、麻紐に押し付けるように盛ります。押し付けつつ、形を作ります。表面が多少デコボコになっても、乾燥後に紙やすりで整えられます。でもここできれいに成形出来たほうが、後の紙やすりの行程がラクになります。
首のあたりまで成形したら、頭を成形します。まずは目の周りと口の周りを先に作ります。目と肌の境目がキレイになるよう、紐状にした粘土をくるっと巻いて貼り付けます。口先も同様に紐状の粘土を舌の上において、舌がニュッと出てきたような、おちょぼ口みたいな感じにします。あとはお団子サイズの粘土を手に取って練って平べったくし、頭に貼り付けます。この作業を繰り返して、頭の土台全体を粘土で覆います。目と口の境目は、ヘラや指で慣らします。先に盛った粘土は乾燥しないよう、時々水で湿らせます。
粘土の乾燥具合をみるための粘土板を作ります。おせんべいサイズでいいです。作業台に調理用ラップを敷いて、その上に粘土を載せ、蛇と同じぐらいの厚みの板にします。ディジュリドゥの接地面からは水分が抜けないので、内部の乾燥に時間がかかります。内部の様子はわからないので、この粘土板で判断します。湿度や蛇のサイズにもよりますが、一か月ぐらいかかると思います。
粘土が乾燥したら、表面を整えます。まずは端がギザギザになっているところをデザインナイフで切り落としてキレイにします。ディジュリドゥまで切らないように注意します。写真は切り落とし前後を比較したものです。
紙やすりで表面を整える前に、ディジュリドゥまでやすりがけしないよう、マスキングテープで保護します。蛇とディジュリドゥの境目にマスキングテープを貼ります。曲線分はちぎってはります。曲線用マスキングテープを使うとラクです。目玉と舌もマスキングテープで保護します。100番の紙やすりを名刺ケースのような板状のものに巻いて、デコボコが気になるところにかけます。地が白くてデコボコがよくわからないので、ライトを横からあてて影を作って確認するといいです。
最後にマスキングテープを剥がしますが、舌やディジュリドゥの塗装が剥げないよう注意します。ドライヤーで糊を温めながらそっと剥がします。注意しても多少は塗装が剥がれますが、後で補修します。
鱗のサイズを決め、蛇本体に下描きとしてマス目を描きます。水性ダーマトグラフで、粘土に溝が出来ないようにやさしく描きます。頭は本物の蛇の写真を参考にして、模様を描きます。頭からしっぽへ、彫刻刀で彫ります。凝る場合は、一枚一枚本物の蛇の鱗の形に彫ります。凝らない場合は、蛇の造形物でよく見るひし形に彫ればいいです。鱗模様無しというデザインもありだと思います。
スプレー塗装しない部分を先に塗装しておきます。(私は蛇本体に色落ちしやすい色を選択してしまったのでこのような順に塗装しました。色落ちが気にならないなら、逆の順番でもかまわないと思います。)塗装しない部分をマスキングテープで保護します。アクリル絵の具で色を塗って、ニスを塗ります。
塗装しない部分をマスキングテープと紙で保護します。粘土とディジュリドゥの境目に曲線用マスキングテープを貼ります。多少はみ出てディジュリドゥを塗装しても目立ちませんが、逆に粘土部分が未塗装になると白い部分が目立ちます。塗装しない部分は紙で覆い、マスキングテープで固定します。目玉と舌、ディジュリドゥの中も忘れずに保護します。塗料の入る隙間がないか、全体をよく確認します。
塗装場所を用意します。十分に広い庭などの私有地が無い場合、塗装ブースを借りたほうがいいです。ディジュリドゥを置くスペースがあっても、スプレー塗装が風に乗って周辺の植木等に付着します。塗装ブースを借りる場合、模型塗装用ではなく、自動車やバイクの塗装用のブースを借りるよう注意してください。借りる際は「2メールぐらいの丸太のような楽器に塗装したいです。」と言うと、お店の人にわかってもらいやすいでしょう。塗装ブースのサービス内容を確認し、当日の持ち物を用意します。
塗装ブースで塗装します。塗料のスプレー缶に描かれた注意書きに従い、塗装します。蛇は凹凸があるので、いろいろな方向からスプレーをかけます。蛇の部分が塗装台に付かないよう注意します。十分に乾燥してから持ち帰ります。ドライヤーをかけながらマスキングテープを剥がします。
塗装の結果を確認します。塗り残した粘土は目立つので、近い色のアクリル絵の具などで塗りつぶします。ディジュリドゥに塗料が付いてしまっていたら、デザインナイフで丁寧にこそげ取ります。ディジュリドゥのクリア塗料が剥げてしまった部分は、筆でニスを薄く塗ります。剥げている個所はライトをあてて確認するといいです。
蛇ディジュリドゥの制作依頼主による演奏動画です。制作前後で撮影し、ディジュリドゥへの影響を確認していただきました。